その女車掌の一方は、もう三十を大分過ぎた、彼の仲間の太鼓叩きの女房で、おさんどんが洋服を着た格好なのだが、もう一方のは十八歳の小娘で、無論木馬館へ雇われる程の娘だから、とてもカフェの女給の様に美しくはないけれど、でも女の十八と云えば、やっぱり、どことなく人を惹きつける所があるものだ。
青い木綿の洋服が、しっくり身について、それの小皺の一つ一つにさえ豊な肉体のうねりが、艶かしく現れているのだし、青春の肌の薫りが、木綿を通してムッと男の鼻をくすぐるのだし、そして、きりょうはと云えば、美しくはないけれど、どことなくいとしげで、時々は、大人の客が切符を買いながら、からかって見ることもあり、そんな場合には、娘の方でも、ガクンガクンと首を振る、木馬のたてがみに手をかけて、いくらか嬉し相にからかわれてもいたのである。
名はお冬といって、それが格二郎の、日毎の出勤を楽しくさせた所の、実を云えば、最も主要な原因であったのだ。