お冬の家の貧乏も、彼の家のと、大差のないことは、彼女が館から帰る時に、例の青木綿の洋服をぬいで、着換えをする着物からでも、充分に想像することが出来るのだし、又彼と道づれになって、露店の前などを通る時、彼女が目を光らせて、さも欲し相に覗いている装身具の類を見ても、「あれ、いいわねえ」などと、往来の町家の娘達の身なりを羨望する言葉を聞いても、可哀相に彼女のお里は、すぐに知れて了うのであった。
だから、格二郎にとって、彼女の歓心を買うことは、彼の軽い財布を以てしても、ある程度まではさして難しい訳でもないのだ。
一本の花かんざし、一杯のおしるこ、そんなものにでも、彼女は充分、彼の為に可憐な笑顔を見せて呉れるのであった。