若しお冬が附文を読んだなら、そこには、どうせ歯の浮く様な殺し文句が並べてあるのだろうが、世間知らずの彼女にしては、恐らく生れて始めての恋文でもあろうし、それに相手があの若者であって見れば、(その時分外に若い男のお客なぞはなく、殆ど子供と女ばかりだったので、附文の主は立所に分る筈だ)どんなにか胸躍らせ、顔をほてらせて、甘い気持になることであろう。
それからは、定めし物思い勝ちになって、彼とも以前の様には口を利いても呉れなかろう。
ああ、そうだ、一層のこと、折を見て、彼女があの附文を読まない先に、そっとポケットから引抜いて、破り捨てて了おうかしら。