で、急いで封筒の表を見たが、宛名は、妙なことには、お冬ではなくて、四角な文字で、難しい男名前が記され、裏はと見ると、どうしてこれが恋文なものか、活版刷りで、どこかの会社の名前が、所番地、電話番号までも、こまごまと印刷されてあるのだった。
そして、中味は、手の切れる様な十円札が、ふるえる指先で勘定して見ると、丁度十枚、外でもない、それは何人かの月給袋なのである。
一瞬間、夢でも見ているか、何か飛んでもない間違いを仕出来した感じで、ハッとうろたえたけれど、よくよく考えて見れば、一途に附文だと思い込んだのが彼の誤りで、さっきの若者は、多分スリででもあったのか、そして、巡査に睨まれて、逃げ場に困り、暢気相に木馬に乗ってごまかそうとしたのだけれど、まだ不安なので、スリ取ったこの月給袋を、丁度前にいたお冬のポケットにそっと入れて置いたものに相違ない、ということが分って来た。