三十前後の若者でしたが、風体はさしてみすぼらしいというではないのに、どことなく淋し気な、少くとも顔つき丈は、決して行楽の人ではなく、私共落伍者のお仲間らしく見えるのです。
彼はベンチの明いた所でも探す様に、暫くそこに立ち止まっていましたが、どこを見ても一杯な上に、彼の風采に比べては、段違いに汚らしく怖らしい連中ばかりなので、恐らく辟易したのでしょう、あきらめて立去り相にした時、ふと彼の視線と私の視線とがぶつかりました。
すると彼は、やっと安心した様に、私の隣の僅ばかりのベンチの空間を目がけて近づいて来るのです。