彼はベンチの明いた所でも探す様に、暫くそこに立ち止まっていましたが、どこを見ても一杯な上に、彼の風采に比べては、段違いに汚らしく怖らしい連中ばかりなので、恐らく辟易したのでしょう、あきらめて立去り相にした時、ふと彼の視線と私の視線とがぶつかりました。
すると彼は、やっと安心した様に、私の隣の僅ばかりのベンチの空間を目がけて近づいて来るのです。
そうした連中の中では、私の風体は、古ぼけた銘仙かなんか着ていて、おかしな云い方ですがいくらか立勝って見えたでしょうし、決して外の人達の様に険悪ではなかったのですから、それが彼を安心させたと見えます。