手紙の内容は、先にも云った通り、ある一聯の残酷な、血腥い、異様に不可解な犯罪事件の、首尾一貫した記録であって、そこに記された有名な心理学者達の名前は、明かに実在のものであって、我々はそれらの名前によって、今から数年以前、この学者連の身辺に起った奇怪な殺人事件の新聞記事を、容易に思い出すことが出来るであろう。
おぼろげな記憶によって、その記事とこれと比べて見ても、私の手に入れた書翰集が全く架空の物語でないことは分るのだが、併し、それにも拘らず、ここに記された事件全体の感じが(簡単な新聞記事では想像も出来なかったその秘密の詳細が)何となく異様であって、信じ難いものに思われるのは何故であるか。
現実は往々にして如何なる空想よりも奇怪なるが為めであろうか。