僕は女中とも相談の上先ず第一に自動電話によって加賀町の夫人の実家へこの不祥事を報告し、実家の依頼を受けて、所轄警察署その他必要な先々へ通知した。
地方裁判所検事の一行が到着して、警視庁や所轄警察署の人々と一緒に現場検証を開始したのは、それから一時間程後であった。
君も知っている通り僕のA新聞社での地位はこういう事柄には縁遠い学芸部の記者だから、裁判所の人などに知合は少いのだけれど、幸にもこの事件を担当した検事綿貫正太郎氏は学芸欄の用件で数度訪問したことがあって、知らぬ仲ではなかったものだから、証人としての供述以上に色々質問もすれば、綿貫氏から話しかけられもした。