先にも記した通り、土蔵の扉には錠がおりていたし、仮令窓は開いていても厳重な鉄棒に妨げられてそこから出入することは出来ないので、現場を調べる為には是非錠前の鍵が必要であった。
検証の時分には加賀町の実家から姉崎未亡人の兄さんに当る人が来ていて、女中と一緒になって鍵のありかを探したのだけれど、どうしても見つからぬので、人々は止むを得ず錠前を毀して土蔵の中へ這入ることにしたが、僕が注意するまでもなく、彼等は錠前の指紋のことを気附いていて、錠前そのものには触れず、扉にとりつけた金具を撃ち毀すことによって目的を達した。
だが、やがてその紛失した鍵が実に奇妙なことには、未亡人の死体の下から発見された。