その紙切れはこの殺人事件での証拠らしい証拠品の唯一のものであって、その筋の人達もこれには非常に興味を持った様に思われるし、僕自身にも、何となくこれが後に重大な意味を持ってくるのではないかという予感があるので、その紙切れについてなるべく詳しく書いて置こうと思う。
最初それを発見した所轄警察の司法主任が、小さく丸められたままの紙切れを注意深く観察して、これは以前からそこに在ったのではなくて、犯罪の際に落されたものに違いないと注意した。
なぜかと云うと、その部屋は床の上にも、並んでいる道具類の上にも、目に見える程埃が積もっていたのに、丸められた紙切れの皺の中にはどこにも全く埃がなかったからだ。