序にあとになって分ったことをつけ加えて置くならば、姉崎家の女中を始め書生や子供の中学生などに糺した結果を綜合するのに、その紙切れは未亡人が持っていたのではなくて、どうかして犯人が落して行ったものとしか考えられなかった。
つまり、これこそ、甚しく難解な材料ではあったけれど、殺人者の素情を探り出す唯一の手掛りに違いなかった。
その紙切れは長さも幅も厚味も丁度官製ハガキ程の正確な長方形で、紙質は上質紙と呼ばれているものであって、その中央に、二本の角の生えたいびつな方形の枠の上に斜に一本の棒を横たえた図形が、濃い墨汁で肉太に描いてあるのだ。