僕が現場で見聞し、後日綿貫検事から聞込んだ事柄の凡てであった。
この事件の最も奇怪な点丈けを要約すると、被害者が全裸体であった事、致命傷の外に全身に六ヶ所の斬り傷があって、その血がてんでんに出鱈目の方向へ流れていたこと、現場に奇妙な図形を記した紙片が落ちていて、それが唯一の証拠品であったこと、時代離れのした庇髪に矢絣の若い女が現場に出入した形跡のあったことなどであるが、しかも更らに奇怪な事は、事件後約一ヶ月の今日まで、これ以上の新しい手掛りは殆ど発見されていないのだ。
第一の事件を迷宮に残したまま、第二の事件が起ってしまったのだ。