先生は煙草をふかしながら何か考え込んでいられるし、奥さんはポツリポツリ姉崎さんの思出話の様なことをお話なすったが、それも途切れ勝ちで、何となく座が白けている所へ、もう時間と見えて次々と会員がやって来た。
一番早く来たのは園田文学士で、この人は僕よりは一年先輩なのだが、卒業以来ずっと黒川先生の研究室にいて、先生の助手の様にして実験心理学に没頭している、度の強い近眼鏡をかけて、いつでもネクタイが曲っている様な、如何にも学者くさい男だ。
(黒川博士の専攻は心霊学などには全く縁遠い実験心理学であって、こういう妙な会を主宰していられるのは、先生の道楽に過ぎないことを、君も多分知っていると思う)