殿村と大宅は、いつものトンネルの入口まで行って、番小屋の仁兵衛爺さんと話をしたり、暗いトンネルの洞穴の中へ五六間踏み込んで、ウォーと怒鳴って見たりして、又ブラブラと村へ引返すのが常であった。
番小屋の仁兵衛爺さんは、二十何年同じ勤めを続けていて、色々恐ろしい鉄道事故を見たり聞いたりしていた。
機関車の大車輪に轢死人の血みどろの肉片がねばりついて、洗っても洗っても放れなかった話、ひき殺されてバラバラになった五体が、手は手、足は足で、苦しそうにヒョイヒョイ躍り狂っていた話、長いトンネルの中で、轢死人の怨霊に出逢った話、その外数え切れない程の、物凄い鉄道綺譚を貯えていた。