この女は恥かしがって感情を押し殺しているのか、真からの冷血動物なのか、それとも若しかしたら、幸吉をそそのかして鶴子を殺害せしめた張本人である為に、その罪の恐怖に脅え切て、こんな様子をしているのか、全くえたいの知れぬ、不思議な感じであった。
彼女が何かにひどく脅えていることは確で、丁度その家の裏が停車場の構内になっているものだから、絶えず機関車の往き来する音が聞え、時々はすぐ窓の外で、鋭い汽笛が鳴り響くのだが、そんな物音にも、雪子はビクッと身を震わせて驚くのだ。
雪子はこの家の二階を借りて、一人で暮しているらしい。