舌を噛み切た山北鶴子は、可哀相に死に切れず、永らく療養所の厄介になっていたが、傷口は快癒しても狂気は治らず、呂律の廻らぬ口で、あらぬことをわめきながら、ゲラゲラと笑う外には、何の能もない気違い女となり果ててしまった。
だが、それは後のお話。
その日、舌噛み切た鶴子を院長に託し、鶴子の実家へは長文の電報を打って置いて、一先ずN市へ引返す汽車の中で、国枝予審判事は、親友の殿村に、こんなことを尋ねたものだ。
舌を噛み切た山北鶴子は、可哀相に死に切れず、永らく療養所の厄介になっていたが、傷口は快癒しても狂気は治らず、呂律の廻らぬ口で、あらぬことをわめきながら、ゲラゲラと笑う外には、何の能もない気違い女となり果ててしまった。
だが、それは後のお話。
その日、舌噛み切た鶴子を院長に託し、鶴子の実家へは長文の電報を打って置いて、一先ずN市へ引返す汽車の中で、国枝予審判事は、親友の殿村に、こんなことを尋ねたものだ。