彼は、叢の中の灌木の蔭に身を隠して、煉瓦塀の口を開いた個所と、正面の建物とを、若しそこから何者かが入って来はしないか、若し家のどこかから光が漏れはしないかと、そればかりを待ち構えていた。
彼はそれ程真剣に凶事を待ち構えながら、何かしら夢を見ている様な、奇怪な遊戯に耽っている様な気持で、心から、現実の人殺しなどを想像することは出来なかった。
彼が警察の助力によって、事を未然に防ごうという気になれなかったのは、一つは猟奇者として秘密を惜しむ意味もあったけれど、主としてこの非現実的な、夢見心地からであったに違いない。