彼は又しても悪夢のもやに捲き込まれる様な気持で、そのテントの前に佇んで、毒々しいペンキの絵看板を見上げた。
丁度彼の前にあったのは、一人の醜い一寸法師の娘が、印半纒を着て、鉢巻をして、手踊りを踊っている絵であったが、その娘の厚ぼったい唇が、遠くの街燈の光を受けて、薄気味悪く笑っていた。
今度空車が通ったら呼ぼうと考えながら、何となくその絵看板にひきつけられて立ちつくしていると、小屋の中に忍びやかな人の跫音がした様に思われたので、ギョッとその方角に目をやると、小屋の入口の幕がムクムクと動いて、一人の洋服を着た男がソッと忍び出して来た。