家庭教師の殿村京子などは、そう云って青眼鏡の言葉を信じようともしなかったが、守青年は、あの悪夢の様な殺人の目撃者であった丈けに、一概に賊のおどし文句とは言切れない気がした。
父親の操一氏も、大切な一人娘の事だから、兎も角念の為にと云うので、警官の巡回を増して貰うやら、二人いる書生の上に更に屈強な青年を一人傭入れるやら、珠子の通学の往き復りには書生を供させるやら、出来る丈けの用心をした。
守、珠子兄妹の母は、数年以前世を去って、家族と云っては、独身を続けている父の操一氏と、兄妹の三人切りであった。