父親の操一氏も、大切な一人娘の事だから、兎も角念の為にと云うので、警官の巡回を増して貰うやら、二人いる書生の上に更に屈強な青年を一人傭入れるやら、珠子の通学の往き復りには書生を供させるやら、出来る丈けの用心をした。
守、珠子兄妹の母は、数年以前世を去って、家族と云っては、独身を続けている父の操一氏と、兄妹の三人切りであった。
三人の身の廻りの世話は長年勤めている老女中が引受けていたが、母に代って若い珠子を教え導く人がなかったので、操一氏は知合の牧師に頼んで、教養あるクリスチャンで、家庭教師の経験を積んだ殿村夫人を傭入れた。