頼みに思う父の操一氏は、麻酔の夢さめやらず、車の烈しい動揺も知らぬげに、眠りこんでいるし、運転手と助手とは、神経のない自動人形の様に、広い二つの背中を見せているばかりだし、窓の外は、もう一時に近い夜更け、しかも淋しい生垣道、通りかかる人もない。
絶体絶命の苦悩を通り越して、珠子は気が遠くなって行く様に感じた。
そして、不思議なことには、毒虫の厚ぼったい鋏の圧力が、そのネットリとあぶらぎった感触が、烈しい動物の体臭が、寧ろ甘く好もしいものにさえ感じられた。
頼みに思う父の操一氏は、麻酔の夢さめやらず、車の烈しい動揺も知らぬげに、眠りこんでいるし、運転手と助手とは、神経のない自動人形の様に、広い二つの背中を見せているばかりだし、窓の外は、もう一時に近い夜更け、しかも淋しい生垣道、通りかかる人もない。
絶体絶命の苦悩を通り越して、珠子は気が遠くなって行く様に感じた。
そして、不思議なことには、毒虫の厚ぼったい鋏の圧力が、そのネットリとあぶらぎった感触が、烈しい動物の体臭が、寧ろ甘く好もしいものにさえ感じられた。