懐中電燈の狭い光がチロチロと動く中を、背の高い方の部下が、指図に従って外へ出て行くのが見えた。
その大男は古びた背広の襟を立てて口辺を隠し、鳥打帽を思い切り深く冠って両眼までも隠す様にしていたので、咄嗟の場合、動揺する懐中電燈の光では、顔なぞ全く分らなかった。
では、もう一人の小男の方はと見ると、これはじっとそこに立っていたので、やや明瞭に見て取ることが出来たが、こうした悪者達のならわしでもあろう、やっぱり背広の襟と鳥打帽とで、顔を隠し、その上このちっぽけな男は、御丁寧にも、黒いスカーフで、丁度珠子の猿轡と同じ様に、鼻の上まで包んでいた。