痛さに暫くは身動きも出来ないでいると、背中に負ぶさっていた珠子の身体が、スーッと宙に浮いて、その代りに、チクチクと肌を刺す竹藪の一塊りが、彼の上にドッと倒れかかって来た。
咄嗟に珠子を奪われたことを気附いたが、もがけばもがく程、覆いかぶさった竹藪がこんがらがって、加勢を求めようにも、その辺に味方の影もなく、兎角する間に、珠子を奪い取った賊は、遙かの闇に逃げ去ってしまった。
やっとの思いで、彼が竹藪の下から這い出した時には、珠子は勿論、賊の姿も見えず、味方もどこへ行ったのか、三笠探偵の安否さえ分らぬままに、目を圧して迫って来るのは、ただ紅蓮の焔であった。