彼はそれを掴み出して、左見右見して感にたえている中に、見れば見る程、今死骸の二の腕から切離されたとしか思えない余りの生々しさに、段々不気味になって、ポイと道端へ放り出してしまった。
すると、なぜそんな突拍子もない事が起ったのか、通り魔の様に異様な出来事であったが、その辺を嗅ぎ廻っていた一匹の野良犬が、いきなり蝋細工の女の生腕を銜えると、往来の真中を真一文字に走り出したのだ。
道行く人々も、怪奇小説の銅版挿絵にでもある様な、この異様な光景に、思わずハッと立止って、野犬の姿を見送らないではいられなかった。