そういう一聯の出来事が、銀座街を中心に継起して暫くの後、やっぱり銀座通りのRという大洋服店のショウ・ウインドウの前に、妙な男が立止っていた。
型のくずれた黒ソフト帽、画家の様に長く伸した髪、青ざめた顔、ひどい近眼と見えて厚いレンズの二重眼鏡、ピンとはね上った口髭、三角型の顎髯、羊羹色の丈の短いインバネス、その下から二十年も昔流行した、荒い柄の、薄汚れた縞ズボン、破れ歪んだパテント・レザーの礼装靴が見えているという、怪奇映画の主人公みたいな人物だ。
その人物が、さい前から、R洋服店のショウ・ウインドウの大ガラスの前に、じっと立ち尽したまま、まるで案山子の様に身動きもしないのだ。