五分、十分、二十分、彼の姿勢は生人形の様に不動であったし、彼の視線は見えぬ糸で結びつけた様に微動だにしなかった。
初めの程は、道行く人も、邪魔っけな奴だと、よけて通るばかりで、さして怪しみもしなかったが、時がたつにつれて、彼の凝視のただならぬ熱心さに、ふと好奇心を起して立止る人があると、それからは、二人立ち、三人立ち、瞬くひまに、恐ろしい黒山の人だかりとなった。
その癖、その夥しい人立ちの中に、インバネスの男が見つめている品物を、ハッキリ知っている人は、一人もいなかった。
五分、十分、二十分、彼の姿勢は生人形の様に不動であったし、彼の視線は見えぬ糸で結びつけた様に微動だにしなかった。
初めの程は、道行く人も、邪魔っけな奴だと、よけて通るばかりで、さして怪しみもしなかったが、時がたつにつれて、彼の凝視のただならぬ熱心さに、ふと好奇心を起して立止る人があると、それからは、二人立ち、三人立ち、瞬くひまに、恐ろしい黒山の人だかりとなった。
その癖、その夥しい人立ちの中に、インバネスの男が見つめている品物を、ハッキリ知っている人は、一人もいなかった。