こうしてはいられないと思いながらも、自宅にとじ籠っている日が多かった。
その日も、彼は書斎の机によりかかって、両手の指で頭の毛を掻き乱しながら、徒らに思い悩んでいたのだが、そこへ、ひょっこりと、珠子の元家庭教師殿村京子が入って来た。
この醜いけれど上品な未亡人は、我子の様にいつくしんでいた珠子の死に遭って、病気になるのではないかと案じられる程、歎き悲しんで呉れたのだが、やがて初七日も済んだとき、彼女の方から解職を申出でたので、相川操一氏は、丁度珠子の学校友達の、あるお嬢さんの家から話があったのを幸い、殿村未亡人を、そこの家庭教師に世話をして、今日はそのお目見えの日であった。