殿村夫人は娘を抱きしめる様にして、激情の余り泣き出す力さえなく、空ろな目で空間を見つめたまま、長い長い間身動きもしなかったが、やがて、彼女の右手が、内ぶところの中でモゾモゾやっていたかと思うと、何かしら小さな丸薬の様なものを取出して、膝に凭れていた一寸法師の口へ持って行って、「サこれを呑み込むのよ」と囁きながら、その口に含ませた。
可哀相な低能児は、まるでおいしいお菓子ででもある様に、それをゴクリと呑みこんだが、すると、今度は今一つの粒を、手早く彼女自身の口へ、……それが極わめて何気なく、ごく静かに行われたので、人々が意味を悟る隙がない程であった。
無論見ていないのではなかった。