待避壕内に耳と目を圧えている都民にも、これらの恐るべき音波はひしひしと感じられ、爆弾による地響きは、大地震のごとく待避壕そのものを揺り動かし、怒濤にもてあそばれる小舟に乗っているのではないかと怪しまれるばかりであった。
地上には一点の火光もなく、敵機の見得るものは照空燈の光源のみ、しかもその八方よりの照射に乗組員は目もくらみ、爆撃の的を見極める余裕などあろうはずもなく、敵弾はことごとく盲爆、その多くは海中または郊外の田園地帯に落下したが、しかし市街地を破壊せるものも決して僅少ではなかった。
重要施設、重要工場の被害は案外少なかったけれども、民家盲爆による負傷者は数百名におよび、死者また少なからず、火災は都内の数ヶ所に起った。