箱は浅い長方形のもので、まず誰でも欲しいと思う人の手の届く所に一つと云った風に都合よく置かれるのである。
菓子の数は一箱に十ぐらいの割だったかと思うが、それを食べたいだけ食べて、後からその代価を箱の中に入れるのが無言の規約になっていた。
私はその頃この習慣を珍らしいもののように興がって眺めていたが、今となって見ると、こうした鷹揚で呑気な気分は、どこの人寄場へ行っても、もう味わう事ができまいと思うと、それがまた何となく懐しい。
箱は浅い長方形のもので、まず誰でも欲しいと思う人の手の届く所に一つと云った風に都合よく置かれるのである。
菓子の数は一箱に十ぐらいの割だったかと思うが、それを食べたいだけ食べて、後からその代価を箱の中に入れるのが無言の規約になっていた。
私はその頃この習慣を珍らしいもののように興がって眺めていたが、今となって見ると、こうした鷹揚で呑気な気分は、どこの人寄場へ行っても、もう味わう事ができまいと思うと、それがまた何となく懐しい。