それから一箇月ばかりというもの、昼は鬼のような奴らに追い使われ、こづきまわされ、夜はお父さまお母さまのことを思っては枕をぬらしながら、言うに言えない悲しい恐しい朝晩を送りむかえたのでした。
ある時は大嵐にあって、甲板に襲いかかって来る小山のような波に、いよいよ死ぬのかと、三人が抱きあって、東京のお母さまの名を呼びつづけたこともありました。
又ある時は、海賊船が小さな汽船を追跡して、機関銃でおどしつけ、荒くれ男どもが、青龍刀を振りかぶって相手の汽船に乗りこんで行き、乗組員を片っぱしから縛りあげて、積荷をドシドシこちらの船へ運ぶという、戦争のように血なまぐさいありさまを、見せつけられたこともありました。