「御母さんは何にも云わないけれども、どこかに怖いところがある」
私は母を評した兄のこの言葉を、暗い遠くの方から明らかに引張出してくる事が今でもできる。
しかしそれは水に融けて流れかかった字体を、きっとなってやっと元の形に返したような際どい私の記憶の断片に過ぎない。
「御母さんは何にも云わないけれども、どこかに怖いところがある」
私は母を評した兄のこの言葉を、暗い遠くの方から明らかに引張出してくる事が今でもできる。
しかしそれは水に融けて流れかかった字体を、きっとなってやっと元の形に返したような際どい私の記憶の断片に過ぎない。