と云うのは、その頃十八歳の木崎初代が初めて、見習タイピストとしてS・K商会の人となったからである。
木崎初代は、私が生れるときから胸に描いていた様な女であった。
色は憂鬱な白さで、と云って不健康な感じではなく、身体は鯨骨の様にしなやかで弾力に富み、と云ってアラビヤ馬みたいに勇壮なのではなく、女にしては高く白い額に左右不揃いな眉が不可思議な魅力をたたえ、切れの長い一かわ目に微妙な謎を宿し、高からぬ鼻と薄過ぎぬ唇が、小さい顎を持った、しまった頬の上に浮彫りされ、鼻と上唇の間が人並みよりは狭くて、その上唇が上方にややめくれ上った形をしていると、細かに書いてしまうと、一向初代らしい感じがしないのだが、彼女は大体その様に、一般の美人の標準にはずれた、その代りには私丈けには此上もない魅力を感じさせる種類の女性であった。