だが、私と諸戸との関係については、後に屡々述べる機会があるであろう。
それは兎も角、木崎初代との、あの場末のホテルに於ての最初の夜は、今も猶私の忘れ兼ねる所のものであった。
それはどこかのカフェで、その時私達はかけおち者の様な、いやに涙っぽく、やけな気持ちになっていたのだが、私は口馴れぬウィスキイをグラスに三つも重ねるし、初代も甘いカクテルを二杯ばかりもやって、二人共真赤になって、やや正気を失った形で、それ故、大した羞恥を感じることもなく、そのホテルのカウンタアの前に立つことが出来たのであった。