そして、私はと云うと、無論その様な恋情を理解することは出来なかったけれど、彼の学殖なり、一種天才的な言動なり、又異様な魅力を持つ容貌なりに、決して不快を感じてはいなかった。
それ故彼の行為が、ある程度を越えない限りに於ては、彼の好意を、単なる友人としての好意を、受けるに吝でなかったのである。
私は実業学校の四年生であった頃、家の都合もあったのだが、寧ろ大部分は私の幼い好奇心から、同じ東京に家庭を持ちながら、私は神田の初音館という下宿屋に泊っていたことがあって、諸戸とはそこの同宿人として知合ったのが最初であった。