ある期間を過ぎると、暫くの間、彼は私の顔さえ見れば憂鬱になってしまって、黙って溜息ばかりついているような時期が続いたが、やがて彼と知合って半年もたった頃、私達の上に遂にある危機が来たのだった。
その夜、私達は下宿の飯がまずいと云って、近くのレストランへ行って、一緒に食事をしたのだが、彼はなぜかやけのようになって、したたか酒をあおり、私に呑めと云って聞かぬのだ。
無論私は酒なんか呑めなかったけれど、勧められるままに、二三杯口にしたところが、忽ちカッと顔が熱くなり、頭の中にブランコでもゆすっているような気持で、何かしら放縦なものが心を占めて行くのを感じ始めた。