人々は「お婆さんここを開けなさい」と叫んでドンドン入口の戸を叩いた、もどかしがって裏へ廻る者もあったが、そこも締りのままで開くことが出来ない。
でも暫くすると、母親が気が顛動していたのでという意味の詫言をして、締をはずしたので、人々はやっと屋内に入り、恐ろしい殺人事件が起ったことを知ったのである。
それから警察に知らせるやら、母親の亡夫の弟の所へ使を走らせるやら、大騒ぎになったが、もうその頃は町内中総出の有様で、隣家の古道具屋の店先などは、そこの老主人の言葉を借りると、「葬式なんかの折の休憩所」といった観を呈していた。