そうでなくて、あの様にそれぞれ一方の才能に恵まれた年長者達が、青二才の私などに構ってくれる筈はなかったのだ。
それは兎も角、深山木幸吉というのは、私の勤め先の年長の友人の紹介で知合いになった間柄であったが、当時四十歳を大分過ぎていたにも拘らず、妻もなく子もなくその外血縁らしいものは、私の知る限り一人もなく、本当の独り者であった。
独り者といっても諸戸の様に女嫌いという訳ではなく、これまでに、随分色々な女と夫婦みたいな関係を結んだらしく、私の知る様になってからでも、二三度そういう女を換えているのだが、いつも長続きがしないで、暫く間を置いて訪ねて見ると、いつの間にか女がいなくなっている、といった調子であった。