私は小説を読んで、よく、その主人公がお人好しで、へまばかりやっているのを見ると、自分であったら、ああはしまいなどと、もどかしく、歯痒く思うことがあるが、この私の書物を読む人も、主人公である私が、何か五里霧中に迷った形で、探偵をやるのだといいながら、一向探偵らしいこともせず、深山木幸吉のいやな癖の思わせぶりに、いい気になって引ずられている様子を見て、きっとじれったく思っていらっしゃることでしょう。
私とても、こんな風にありのままに記して行くのは、自分の愚かさを吹聴する様なもので実は余り気が進まぬのだけれど、当時、私は実際お坊ちゃんであったのだから、どうも致方がない。
読者を歯痒ゆがらせる点については、事実談ならこうもあろうかと、大目に見て貰う外はないのである。