又、警察は、私の陳述によって、八十位に見える例の怪老人のことも知ったのであるが、その様な老人は、如何程探索しても、発見することが出来なかった。
十歳のいたいけな少年が二度も殺人罪を犯したり、八十歳のよぼよぼの老翁が、最新式のブローニングを発射して、その十歳の少年を殺したなどという考は、余りに荒唐無稽で且つ幻想的であった為か、常識に富む其筋の人々の満足を買うことが出来なかった様である。
それには、諸戸が、帝国大学の卒業生ではあったけれど、官途にもつかず、開業もせず、奇怪千万な研究に没頭していたからでもあろうし、又、私はといえば、恋に狂った文学青年みたいな男だったものだから、警察では、私達を、一種の妄想狂――復讐や犯罪探偵に夢中になった変り者――という風に解釈したらしく、邪推かも知れぬけれど、諸戸のかの条理整然たる推理をも、妄想狂の幻として、真面目には聞いてくれなかった様に思われた。