それは普通の泥棒ごっこではなくて、友達と二人で、手帳と鉛筆を持って、深夜、さも秘密らしく近くの町々を忍び歩き、軒並の表札を書留めて廻り、何町の何軒目には、何という人が住んでいるということを諳んじて、何か非常な秘密を握った気になって悦んでいたものである。
その時の相棒の友達というのが、馬鹿にそんな秘密がかったことが好きで、探偵遊びをするにも、彼の小さな書斎を探偵本部と名づけて、得意がっていたのだが、今諸戸がこの様な所謂「探偵本部」を作って得意がっているのを見ると、三十歳の諸戸が、当時の秘密好きな変り者の少年みたいに思われ、私達のやっていることが子供らしい遊戯の様にも感じられるのであった。
そして、そんな真剣の場合であったにも拘らず、私は何だか愉快になって来た。