私は諸戸の異様な挙動を理解することが出来なくて、独り取残されたまま、暫くはぼんやりしていたが、諸戸は、「明日来てくれ、その時すっかり話をする」と云ったのだから、兎も角、私は一先ず帰宅して明日を待つ外はなかった。
だが、この神田の家へ来る道さえ、乃木将軍の像を古新聞などに包んで、用心に用心を重ねた位だから、その中に入っていた大切な二品を、私の自宅へ持帰るのは、非常に危険なことに相違ない。
私は左程にも感じぬけれど、死んだ深山木といい、諸戸といい、曲者はただこの品物を手に入れたいばっかりに、人を殺したのだと云っている。