松山は父親の長い手紙を持っていて、その文面に基いて意見を述べた訳だが、一口に云えば、僕は普通の意味の医者になって金を儲けるにも及ばぬし、学者となって名をあげる必要もない。
それよりも、外科学の進歩に貢献する様な大研究を為しとげて欲しいということであった。
当時欧州大戦がすんだばかりで、滅茶苦茶になった負傷兵を、皮膚や骨の移殖によって、完全な人間にしたとか、頭蓋骨を切開して、脳髄の手術をしたり、脳髄の一部分の入替えにさえ成功したという様な、外科学上の驚くべき報告が盛んに伝えられた時分で、僕にもその方面の研究をしろという命令なのだ。