今や私は一篇の冒険小説の主人公であった。
二人を送り出して、今まで徳さんの息子が着ていた磯臭いボロ布子を身につけると、私は小屋の窓際にうずくまって、障子の蔭から目ばかり出して、小舟の行手を見守っていた。
牛の寝た姿の岬は、夕もやに霞んで、黒ずんだ海が、鼠色の空と溶け合い、空には一つ二つ星の光さえ見えた。
今や私は一篇の冒険小説の主人公であった。
二人を送り出して、今まで徳さんの息子が着ていた磯臭いボロ布子を身につけると、私は小屋の窓際にうずくまって、障子の蔭から目ばかり出して、小舟の行手を見守っていた。
牛の寝た姿の岬は、夕もやに霞んで、黒ずんだ海が、鼠色の空と溶け合い、空には一つ二つ星の光さえ見えた。