(逢瀬とは変な言葉だが、その間の諸戸の態度は、何となくこの言葉にふさわしかった)その五日間の私の心持なり行動なりを詳しく思出せば、随分書くこともあるけれど、全体のお話には大して関係のないことだから、凡て略すことにして、要点丈けを摘んで見ると、
あの謎の様な出来事を発見したのは、三日目の早朝、諸戸と紙つぶての文通をする為に、私が何気なく土蔵に近づいた時であった。
まだ朝日の昇らぬ前で、薄暗くもあったし、それに島全体を朝もやが覆っていて、遠目が利かなんだせいもあるが、何よりもそれが余り意外な場所であった為に、私は例の塀外の岩の五六間手前まで、まるで気附かないでいたが、ふと見ると、土蔵の屋根の上に、黒い人影がモゴモゴと蠢いているではないか。