私はそんな幻を描いて、脇の下に冷汗を流しながら、立竦んでいたのだが、意外なことには、丈五郎は、その鬼瓦を抱えたまま、屋根の向側へおりて行ってしまった。
邪魔な鬼瓦をどこかに運んで置いて、身軽になって元の所へ戻って来るのだろうと、いつまで待っても、そんな様子はないのである。
私はオズオズと塀の蔭から例の岩の所まで進んで、そこに身を隠して、なおも様子を窺っていたが、その内に朝もやはすっかりはれ渡り、岩山の頂から大きな太陽が覗き、土蔵の壁を赤々と照らす頃になっても、丈五郎は、遂に再び姿を見せなかったのである。