と云って、又紙つぶてで、尋ね返していては、時間をとるばかりだし、いつ丈五郎が土蔵の中へ這入って来ぬとも限らぬので、諸戸の思慮を信頼して、私はすぐ様その場を立去った。
それから諸戸の命令に従って、なるべく人家のない所、人通りのない所と、まるで泥棒の様に隠れ廻って、終日島の中を歩き廻った。
仮令人に出会っても化けの皮がはげぬ様、深く頬冠りをし、着物は無論徳さんの息子の古布子で、手先や足に泥を塗って、一寸見たのでは分らぬ様にしてはいたが、それでも、昼日中、野外を歩き廻るのだから、私の気苦労は一通りではなかった。