妙なもので、相手の河野が犯人の探偵に熱中しているのを見ると、私も彼にまけない気で、ふとその足跡を調べて見たくなったものです。
それに一つは、夜来の心遣いと睡眠不足のためにズキズキ痛む頭を、屋外のすがすがしい空気にさらしたくもあって、私はそのまま、顔も洗わないで、階下の縁側から、裏庭へと立出で、散歩の体を装いながら、浴場の裏口の方へとあるいて行きました。
しかし失望したことには、成る程、地面はすっかり堅くなっていて、たまに柔かな所があるかと思えば草が生えていたりして、明瞭な足跡などは一つも発見することは出来ないのでした。