眼鏡の装置を取はずすまでは、予定の滞在期間など構わずに早くこのいまわしい場所を逃げ出したいと思っていたのですが、さて、その装置もなくなり、我身の心配が取のぞかれてしまうと、今度は持前の好奇心が勃然として湧き上り、河野と共に、私達だけの材料によって、犯人の捜索をやって見ようという、大それた願いをすら起すのでした。
その頃には、近くの裁判所からかかりの役人達も出張し、浴場のしみが人間の血液に相違ないことも分り、Y町の警察署ではもう大騒ぎを演じていたのですが、捜索の仕事は、その大がかりな割には、一向に進捗せず、河野の知り合いの村の巡査の話を聞いて見ても、素人の私達でさえ歯痒くなるほどでありました。
その警察の無力ということが、一つは私をおだてたのです。