そんなに客が少い上、多人数の傭人達はまだ入浴していないのですから、浴槽は綺麗に澄んで、その中に体を投げ出していますと、足の爪までも、一つ一つ見分けられるのです。
男女の区別こそありませんが、都会の銭湯にしてもよいほど、広々とした浴槽、ガランとした洗い場、高い天井、その中央に白々と下った電燈、全体の様子が、夏ながら異様にうそ寒げで、ふとそこのたたきに、人体切断の光景など見える様な気もするのでした。
私はさびしきまま、先日来顔馴染の三造が、壁一重向うの焚き場にいることを思い出して、例の小さな覗き穴のふたをあけて彼の姿をさがしました。